ヨハネ 8
1 これらの後、イエスはガリラヤ地方を歩いておられた。ユダヤ人がイエスを探し出し、殺そうとしていたから、ユダヤ地方を歩こうとされなかった。
2 さて、ユダヤ人の仮庵の祭が近づいていた。
3 それで、イエスの兄弟たちは彼に言った。「弟子たちも、あなたの行なう業を見るように、ここを離れてユダヤに行きなさい。
4 というのは、公に人自ら知られることを求めているのに、秘密裏にことをする者はいない。これらのことをしているのなら、あなた自身を世に示しなさい。」
5 こう言ったのは、ご自分の兄弟たちも、イエスを信じなかったからである。
6 それからイエスは彼らに言われた。「わたしの時はまだ訪れていませんが、あなたがたの時はいつでも準備ができています。
7 世はあなたがたを憎むことができませんが、わたしを憎んでいます。なぜなら、世の行ないが悪だと、わたしが証言するからです。
8 あなたがたは、この祭に上って行きなさい。わたしはまだこの祭に上りません。わたしの時がまだ満ちていないからです。」
9 イエスは、彼らにこのことを言い、ガリラヤに泊られた。
10 しかし、実際には、兄弟たちがその祭に上った後、イエスご自身も公にではなく、秘密裏に祭に上って行かれたのであった。
11 それで、ユダヤ人たちは、祭でイエスを探し、「あの人はどこにいますか。」と言った。
12 群衆の間でイエスのことが、大いにささやかれていた。「彼は善い人です。」と言う者もいれば、「違う、イエスは群衆を惑わしているのです。」と言う者もいた。
13 しかしながら、ユダヤ人を恐れて、誰もイエスについてはっきり意見を言う者はいなかった。
14 しかし祭が半ばほど過ぎた時、イエスは神殿の敷地に入って教えられた。
15 そうすると、ユダヤ人たちは驚いて言った。「この人は、師事したこともないのに、どうして学問があるでしょうか。」
16 イエスは、彼らに答えて言われた。「わたしの教えは、わたし自身のものではなく、わたしを遣わされた方の教えです。
17 もしこの方のご意志を行なおうとすれば、誰であれ、この教えが神から出たのか、それともわたし自身から出たものを話すのか、その者はわかります。
18 自分自身から話す者は、自分の栄光を求めています。しかし、自分を遣わした方の栄光を求めるこの者は真実な者であり、その者の中には不義がありません。
19 モーセはあなたがたに律法を与えたではありませんか。それなのに、あなたがたは誰も、律法を守っていません。なぜわたしを殺そうとしているのですか。」
20 群衆は答えて言った。「あなたは悪霊を所有している。誰があなたを殺そうとしているのか。」
21 イエスは答えて彼らに言われた。「わたしが一つの業を行なったというので、あなたがたはみんな驚いています。
22 このために、モーセがあなたがたに割礼を与えました。なぜなら、割礼はモーセからではなく、父祖たちから来たのです。そして、あなたがたは安息日にも人に割礼をしています。
23 モーセの律法が破られないようにと安息日に人は割礼を受けるのなら、安息日にわたしが人を完全に治したというので、あなたがたはわたしに腹を立てるというのですか。
24 外見で人を裁いてはいけません。正しい裁きで裁きなさい。」
25 そこで、エルサレム出身のある人たちが、「これはあの人たちが殺そうとしている人ではないですか。
26 しかし、見よ。彼は恐れることなく話しているが、人たちは彼に何も言いません。支配者たちにも、この人がほんとうにキリストであることが分かったのでしょうか。
27 ところが、この人がどこから来たかは、私たちは知っています。しかし、キリストが来られる時は、どこから来られるのか、誰も知りません。」
28 すると、神殿の敷地で教えておられたイエスが叫んで言われた。「あなたがたはわたしを知っています。また、わたしがどこの出身かも知っています。しかし、わたしは自分で勝手に来たのではありません。わたしを遣わした方は真実です。あなたがたは、その方を知りません。
29 しかし、わたしはその方を知っています。なぜなら、わたしがその方から来たのであり、その方がわたしを遣わされたからです。」
30 それから、彼らはイエスを捕らえたかったが、彼に手をかけた者は誰もいなかった。なぜなら、イエスの時はまだ来ていなかったからである。
31 しかし、群衆の中から大勢の者たちがイエスを信じた。そして、「キリストが来られる時、この方がなさったより多くの奇蹟をなさいますか。」と言った。
32 群衆がイエスについて、このようなことをつぶやいているのが、パリサイ派の人たちの耳に入った。それで、パリサイ派の人たちや祭司長たちが、イエスを逮捕するために、役人たちを派遣した。
33 それで、イエスは彼らに言われた。「今しばらく、わたしはあなたがたと共にいますが、その後、遣わされた方のみもとへわたしは帰ります。
34 あなたがたはわたしを捜しますが見つかりません。わたしがいる所にあなたがたは来ることができません。」
35 それで、ユダヤ人たちは互いに言った。「私たちが見つけることはないように、この人はどこかへ行くつもりなのか。まさかギリシャ人のディアスポラ①の間に散らされたユダヤ人たちの所に行き、ギリシャ人を教えるつもりはないと思うが。
36 『あなたがたはわたしを捜すが見つからない。わたしがいる所にあなたがたは来ることができない。』と彼が言ったこの言葉は、どういう意味なのだろうか。」
37 祭の最後の日、大いなる日に、イエスは立って大声で言われた。「渇く者がいれば、誰でもわたしの所へ来て飲みなさい。
38 わたしを信じる者は、聖書が言っているとおり、『その人の腹①の底から生ける水が川となって流れ出る。』」
39 しかし、イエスは、ご自分を信じる人々が受けることになっている御霊について、このことを話された。なぜなら、イエスはまだ栄光をお受けになっていなかったので、聖霊はまだ与えられていなかった。
40 それで、この言葉を聞いた群衆の多くの者は、「この方は確かに、あの預言者だ。」と言った。
41 他の者たちは、「この方はキリストでいらっしゃる。」と言った。しかし、「ガリラヤからキリストが出るとでも言うのか。」と言う者もいた。
42 「聖書は、『キリストがダビデの種から、またダビデの住んでいた町ベツレヘムから来る。』と言っているではないか。」
43 そこで、イエスのことで、群衆の中で分裂が起こった。
44 そして、彼らの中から、イエスを捕まえようと思った者たちもいたが、自ら手をかけた者は誰もいなかった。
45 神殿の役人たちは大祭司たちとパリサイ派の人たちの所へ帰って行った。そうして彼らは役人たちに言った。「なぜあの人を連れて来なかったのか。」
46 役人たちは答えた。「あの方のように話した男は、未だかつて誰もいませんでした。」
47 すると、パリサイ派の人たちは彼らに答えた。「お前たちまでもだまされたのではないだろうね。
48 支配者たちやパリサイ派の人たちの中の誰か、彼を信じたと言うのか。
49 しかし、律法を知らないこの群衆どもは呪われているのだ。」
50 彼らの中の一人で、夜中にイエスの所に行ったニコデモが彼らに言った。
51 「我々の律法は、まず本人から聞き、彼の行なったことを知った上でなければ、判決を下さないこととされているではありませんか。」
52 彼らはニコデモに答えて言った。「あなたも、ガリラヤ出身ですか。なぜなら、ガリラヤから預言者は出ないことをよく調べてみなさい。」
53 そして彼らは一人一人、それぞれの家に帰って行った。