ヨハネ 7

11 イエスはパンを手に取り、感謝を捧げてから、弟子たちに分け与えられた。そして弟子たちは座っていた人たちに分け与え、また小さい魚も同様にして、彼らに欲しいだけ与えられた。
12 彼らが満腹になった時、イエスはご自分の弟子たちに言われた。「何もむだにならないように、残り物を集めなさい。」
13 そこで、彼らは集めた。そして、大麦のパン五個を食べた人々が残したパン切れが、十二かごを満たした。
14 それで、イエスのなさったこの奇蹟を見た人々は、「確かにこの方は、世に来られるべきあの預言者です。」と言った。
15 さて、イエスは、人たちがやって来て、力ずくでご自分を捕らえ、王にしようとするのを知っておられた。そのために、再び一人で山に退かれた。
16 それで、夕方になると、弟子たちは海へ下り、
17 船に乗ってカペナウムへ海を渡る途中であった。すでに暗くなっていたが、イエスはまだ弟子たちの所に着いていなかった。
18 そして、強風が吹いてきたので、海は荒れていた。
19 それで、二五か三十スタディオン①ほどこぎ出した時、弟子たちはイエスが海の上を歩き、船に近づいて来られるのを見て恐怖に陥った。
20 しかし、イエスは彼らに言われた、「わたしです。恐れてはいけません。」
21 そこで弟子たちは喜んでイエスを船に迎え入れた。すると、船はすぐに彼らが行こうとしていた地に着いた。
22 次の日、海の向こう岸に立っていた群衆は、そこにはイエスの弟子たちが乗った小舟のほかに、一そうの小舟もないことに気がついた。また、イエスは弟子たちと共に小舟に乗らず、ただ弟子たちだけで出て行ったことに気がついた。
23 (しかし、主が感謝を捧げられた後、人々が食事をした場所の近くに、ほかの小舟が数そうテベリアから来たのである。)
24 それで、群衆はイエスも彼の弟子たちもそこにいないのが分かった時、自分たちもそれぞれの船に乗り、イエスを探してカペナウムに行ったのである。
25 そして、海の向こう側でイエスを探し出すと、彼らはイエスに言った。「ラビ①、いつこちらにおいでになったのですか。」
26 イエスは彼らに答えて言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。あなたがたがわたしを探しているのは、奇蹟を見たからではなく、パンを食べて満たされたからです。
27 腐る食べ物のために働くのではなく、永遠の命に至る食べ物のために働きなさい。それは人の子があなたがたに与えるものです。彼こそ父なる神が承認の印を押されたからです。」
28 そこで彼らはイエスに言った。「私たちは神の御業を行なうために、何をしたらよいのでしょうか。」
29 イエスは彼らに答えて言われた。「神が遣わされた者を信じることが、神の御業です。」
30 従って、彼らはイエスに言った。「では、私たちが見て、あなたを信じるために、あなたはどんなしるしを示してくださいますか。何をなさいますか。
31 私たちの父祖たちは荒野でマナを食べました。『神は彼らに天国からのパンを食べるために与えてくださった。』と書いてあるとおりです。」
32 するとイエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、わたしはあなたがたに言います。モーセはあなたがたに天国からそのパンを与えたのではありません。しかし、わたしの父は、天国からまことのパンを、あなたがたに与えてくださいます。
33 というのは、神のパンは、天国から下って来て、世に命を与える者です。」
34 すると彼らはイエスに言った。「主よ、いつも私たちにこのパンを与えてください。」
35 しかし、イエスは彼らに言われた。「わたし自身が命のパンです。わたしに来る者は決して飢えることはなく、わたしを信じる者は決して渇くことがありません。
36
37 父がわたしに与えられる人は皆、わたしの所に来ます。またわたしは、わたしの所に来る人を決して追い出しはしません。
38 なぜなら、わたしが天国から下って来たのは、わたし自身の意志を行なうためでなく、わたしを遣わされた方のご意志を実行するためだからです。
39 そして、これがわたしを遣わされた父のご意志です。すなわち、父がわたしに与えてくださったすべての人の中から、わたしは一人も失うことはなく、最後の日にその人を復活させることです。
40 また、これがわたしを遣わされた父のご意志です。つまり、子を見て彼を信じる人が皆、永遠の命を持つことです。また、わたし自身は最後の日にその人を復活させます。」
41 すると、ユダヤ人たちはイエスが、「わたしは天国から下って来たパンです。」と言われたので、イエスについてぶつぶつ言っていた。
42 そして彼らは続けて言った。「これはヨセフの息子で、私たちは彼の父と母を知っている、そのイエスではないか。では、何でこの男は、『わたしは天国から下って来ました。』と言うのか。」
43 それで、イエスは彼らに答えて言われた。「仲間内でぶつぶつ言うのは止めなさい。
44 もしわたしを遣わした父が引き寄せなければ、誰もわたしの所に来ることができません。そして、わたし自身は最後の日にその人を復活させます。
45 『そして、彼らは皆神によって教えられる。』と預言者たちの書に書いてあります。だから、父から聞き学んだすべての者は、わたしの所に来ます。
46 神から来た者の他に、誰も父を見た者はいません。この者は父を見たことがあります。
47 まことに、まことに、あなたがたに言います。わたしを信じる者は永遠の命を持つのです。
48 わたしはその命のパンです。
49 あなたがたの父祖たちは、荒野でマナを食べたが死にました。
50 これは、誰でもこれを食べて死ぬことがないように、天国から下って来たパンです。
51 わたしこそが、天国から下って来た生けるパンです。誰でもこのパンを食べれば、永遠に生きます。またわたしが与えるパンは、世の命のために与えるわたし自身の肉です。」
52 そこで、「どういうふうにして、この男は、自分の肉を私たちが食べることができるようにして、与えるのか。」とユダヤ人たちは互いに議論して、言った。
53 すると、イエスは彼らに言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。もしあなたがたは人の子の肉を食べ、また彼の血を飲まなければ、命はあなたがたの内にありません。
54 誰でもわたしの肉を食べ、またわたしの血を飲む者は永遠の命を持っています。そして、わたしは最後の日にその人を復活させます。
55 と言うのは、わたしの肉は真実の食物であり、わたしの血は真実の飲み物だからです。
56 わたしの肉を食べ、またわたしの血を飲む者は、わたしのうちにとどまり、またわたしは彼のうちにとどまります。
57 生ける父がわたしを遣わし、また父によってわたしが生きるように、わたしを食べる人こそがわたしによって生きるのです。
58 これが天国から下って来たそのパンです。あなたがたの父祖たちは、マナ①を食べても死んでしまいました。そのような者ではなく、このパンを食べる者は永遠に生きるのです。」
59 イエスはカペナウムで教えておられた間に、シナゴーグ①でこれらのことを言われた。
60 そこで、イエスの弟子たちの多くは、これを聞いた時にこう言った。「これは耐え難い言葉です。誰が聞いておられようか。」
61 しかしイエスは、ご自分の弟子たちが、これについてぶつぶつ言っているのをご自身のうちで知った時、彼らに言われた。「このことがあなたがたをつまずかせるのですか。
62 ましてや、もしあなたがたは人の子が以前いた所に昇るのを見るとすればどうでしょうか。
63 生かすのは霊です。肉は何の益にもなりません。わたしがあなたがたに話すこの言葉は霊であり、命なのです。
64 しかし、あなたがたのうちに信じない者たちがいます。」イエスは初めから、信じない者たちは誰か、また誰がイエスご自身を裏切るのかを知っておられたからである。
65 またイエスは言われた。「こういうわけで、『もしわたしの父から与えられていなければ、誰もわたしの所に来ることができません。』とわたしはあなたがたに言ったからです。」
66 それ以来、弟子たちの多くは離れ去って、もはやイエスと共に歩まなかった。
67 そこで、イエスは十二人に言われた。「あなたがたも立ち去るつもりですか。」
68 すると、シモン・ペテロはイエスに答えて言った。「主よ、私たちは誰の所に行きましょう。あなたが永遠の命の言葉をお持ちなのです。
69 また、あなたこそ生ける神の御子息であるキリストですと、私たちは信じ、確信しているのです。」
70 イエスは彼らに答えられた。「あなたがた十二人を選んだのは、わたしではありませんか。そしてそのうちの一人は悪魔です。」
71 彼は、シモンの息子ユダ・イスカリオテについてこれを言われた。ユダは十二人の一人でありながら、イエスを正に裏切ろうとする者であった。