ヨハネ 19
1 イエスはこれらのことを言われ、弟子たちと共に出て行き、ケデロン小川を渡り、そこにあった園に、彼と弟子たちは入られた。
2 そしてそこは、イエスがご自分の弟子たちとよく集まった所であったから、イエスを裏切ったユダも知っていた所であった。
3 その時、ユダは、大祭司たちとパリサイ派の人たちから構成された分遣隊と下役人たちを連れて、たいまつや灯り、それに武器を持ってそこに来た。
4 それで、イエスは、すべてご自分に起こることを知りながら、進み出て、彼らに言われた。「だれを捜しているのですか。」
5 彼らはイエスに答えた。「ナザレ人のイエス。」イエスは彼らに言われた。「わたしです。」そして、イエスを裏切ったユダも、彼らと共に立っていた。
6 その時、すなわち、イエスが彼らに、「わたしです。」と言われた時、彼らは後ろに下がって、地面に倒れた。
7 それで、イエスは再び彼らに尋ねられた。「だれを捜しているのですか。」そして、彼らは言った。「ナザレ人のイエス。」
8 イエスは答えられた。「『わたしです。』とあなたがたに言いました。それゆえに、もしわたしを捜しているのなら、この人たちが立ち去ることを許しなさい。」
9 これは、「あなたがわたしにくださった人たちを、彼らのうちの一人も失わなかった。」とイエスが言われた御言葉が成就されるためであった。
10 その時、剣を持っていたシモン・ペテロが、剣を抜き、大祭司の僕を打ち、彼の右耳を切り落とした。その僕の名前はマルコスであった。
11 それで、イエスはペテロに言われた。「あなたの剣をさやに収めなさい。わたしは、父がわたしにくださったカップを飲むのは当然ではありませんか。」
12 そこで、分遣隊と千人隊長とユダヤ人の下役人たちは、イエスを逮捕して、彼を縛った。
13 まず、イエスをアンナスの所へ連れて行った。彼はその年の大祭司カヤパの義理の父であったからである。
14 そして、一人の男が国家のために死ぬことは好都合である、とユダヤ人たちに勧めたのは、このカヤパであった。
15 そして、シモン・ペテロと他の弟子一人は、イエスについて行っていた。その弟子は大祭司の知人であって、イエスと共に大祭司の中庭に入った。
16 しかし、ペテロは外で門の所に立っていた。したがって、大祭司の知人であるその弟子は出て行って、門番の女に話し、ペテロを連れて入った。
17 そこで、門番である若い女奴隷はペテロに言った。「あなたもあの人の弟子の一人ではありませんか。」彼は言った。「私は違う。」
18 そして、寒かったので、僕たちや下役人たちは炭火をおこし、そこに立っていた。そして、彼らは暖をとっていた。ペテロも彼らと共に立って、暖をとっていた。
19 その時、大祭司はイエスの弟子について、そして彼の教理について、イエスに尋問した。
20 イエスは大祭司に答えられた。「わたしはみんなの前で世に話しました。ユダヤ人がいつも集まるシナゴーグや神殿の敷地で、わたしはいつも教えました。そして、わたしは人に隠れて話したことはありません。
21 なぜわたしに尋問しますか。わたしが何を言ったかを、わたしの聞き手である彼らに尋問しなさい。見よ、わたしが彼らに何を言ったのか、彼らは知っています。」
22 そして、イエスはこれらのことを言われると、そばに立っていた一人の下役人が、イエスを平手で打ち、言った。「お前はこんなふうに、大祭司に答えるのか。」
23 イエスは彼に答えられた。「もし、わたしの言い方が悪かったとしたら、その悪かったことについて証明しなさい。しかし、もし良かったなら、あなたはなぜわたしをたたくのですか。」
24 ところが、アンナスはイエスを縛ったままで、大祭司カヤパの所に送った。
25 一方、シモン・ペテロは立って、暖をとっていた。そこで、彼らはペテロに言った。「あなたもあの人の弟子の一人ではないか。」ペテロはそれを否定して言った。「私は違う。」
26 大祭司の僕の一人で、ペテロが耳を切り落とした者の親戚が言った。「私があの人といっしょにいるあなたを、園で見なかったとでも言うのですか。」
27 そこでまた、ペテロは否定した。そのとたん、雄鶏が鳴いた。
28 それから、彼らはイエスをカヤパの所から官邸に連れて行った。早朝であった。そして、汚れずに過越祭の食事ができるように、彼ら自身は官邸に入らなかった。
29 それで、ピラトは彼らの所に出て行って、言った。「この男に対してどのような訴えをするというのか。」
30 彼らはピラトに答えて言った。「もしこの男が悪人でなかったら、あなたに引き渡さなかったでしょう。」
31 ついで、ピラトは彼らに言った。「この男を連れて行って、お前たち自身の律法によって裁け。」それで、ユダヤ人たちはピラトに言った。「誰をも死刑にすることは、私たちには非合法なのです。」
32 これは、ご自分がどの死に方で死ぬかと、イエスが示して言われた言葉が成就するためであった。
33 そこで、ピラトはまた官邸に入り、イエスを呼び、言った。「あなたがユダヤ人の王なのか。」
34 イエスは彼に答えられた。「あなたはこのことを自ら言っているのですか、または、わたしに関して他人があなたに言ったのですか。」
35 ピラトは答えた。「私はユダヤ人だとでもいうのか。あなたの同国人と大祭司たちがあなたを私に引き渡したのだ。あなたは何をしたのか。」
36 イエスは答えられた。「わたしの王国は、この世からのものではありません。もしわたしの王国がこの世からのものであったならば、わたしの下役人たちは、わたしがユダヤ人に引き渡されないように戦ったのです。しかし、わたしの王国は現在、ここからのものではありません。」
37 したがって、ピラトはイエスに言った。「では、あなたは王なのか。」イエスは答えられた。「あなたはわたしが王であると言います。わたしはこのため、すなわち真理について証するために生まれ、この目的のために世に来ました。すべて真理に属する者は、わたしの声を聞きます。」
38 ピラトはイエスに言った。「真理とは何か。」そして、ピラトはこう言って、ユダヤ人たちの所へ再び出て、彼らに言った。「私は、この男に何の犯罪も認めない。
39 しかし、お前たちには過越祭に、一人をお前たちに放免してもらう習慣がある。したがって、ユダヤ人の王をお前たちに放免することを私に要求するのか。」
40 そうすると、彼らは皆、再び叫んで言った。「あいつではなく、バラバを。」ところで、バラバは強盗であった。