ヨハネ 12

1 さて、マリヤと彼女の姉妹マルタの村ベタニヤの出身で、ラザロという一人の病人がいた。
2 マリヤは主に香油を塗り、主の足を自分の髪の毛で拭いたその女であり、病気のラザロはこの女の兄弟であった。
3 それで、ラザロの姉妹たちは、「主よ、見てください。あなたの大事な人が病気です。」と言うようにイエスに人を送った。
4 しかし、イエスはこれを聞いて彼に言われた。「この病気は死に至るのではなく、神の栄光のためであり、また神の子がそれを通して栄光を受けるためです。」
5 さて、イエスはマルタとその姉妹とラザロを愛しておられた。
6 しかしながら、ラザロが病気であると聞いた時、イエスはご自分が滞在していた所にさらに二日間とどまられた。
7 それからその後、彼は弟子たちに言われた。「もう一度ユダヤに行きましょう。」
8 弟子たちは彼に言った。「ラビ①よ、ユダヤ人たちは、つい最近あなたを投石刑にしようとしていたのに、あなたはもう一度あそこに行かれるのですか。」
9 イエスは答えられた。「昼間は十二時間でないのですか。だれでも、昼間歩けば、その人はこの世の光を見ているから、つまずきません。
10 しかし、人は夜中に歩けば、彼の中に光がないため、その人はつまずきます。」
11 イエスはこれらのことを話された後、弟子たちに言われた。「わたしたちの友人ラザロは眠っていますが、わたしは彼を起こしに行きます。」
12 それで、イエスの弟子たちは主に言った。「主よ、もし彼が眠っているなら、全快します。」
13 しかし、イエスはラザロの死について話しておられたのであるが、弟子たちは、イエスは、休息のための眠りについて言っていると思った。
14 そこで、その時イエスは彼らにはっきりと言われた。「ラザロは死んだのです。
15 そして、わたしがそこにいなかったことを、あなたがたのために喜んでいます。あなたがたが信じるためです。ともかく彼の所に行きましょう。」
16 そうしたら、デドモ①と呼ばれるトマスは、仲間の弟子たちに言った。「イエスといっしょに死ぬために、私たちも行きましょう。」
17 さて、イエスが来てみると、ラザロはすでに四日間、墓の中に横たわっていたことを知らされた。
18 それで、ベタニヤはエルサレムに近く、十五スタディオン①ほど離れていた。
19 そして、ユダヤ人は大勢、その兄弟のことでマルタとマリヤを慰めるために、彼女たちの回りにいる人たちの所に来ていた。
20 それでマルタは、イエスが来られると聞いてすぐ彼を出迎えに行った。しかし、マリヤは家の中で座っていた。
21 その時、マルタはイエスに言った。「主よ、あなたがここにおられたなら、私の兄弟は死にはしませんでしたのに。
22 しかし、あなたが神に願えば、何であれ神があなたになして下さることを、私は今でも知っています。」
23 イエスは彼女に言われた。「あなたの兄弟は復活します。」
24 マルタは彼に言った。「最後の日の復活の時に、彼が復活することを、私は知っています。」
25 イエスは彼女に言われた。「わたしは復活であり、命です。わたしを信じる者は、死んだとしても生きます。
26 そして、誰であれ生きていて、わたしを信じる者は、決して永遠に死ぬことはありません。あなたはこのことを信じますか。」
27 彼女はイエスに言った。「はい、主よ、あなたが唯一のキリストであり、世に来られることになっている神の御子息であられることを信じています。」
28 マルタはこれらのことを言ってから、帰って、自分の姉妹マリヤを、目立たないように呼んで言った。「先生は近くまでいらしていて、あなたを呼んでいらっしゃいます。」
29 マリヤはそれを聞くとすぐ、すばやく立ち上がり、イエスの所に行った。
30 しかし、イエスはまだ村に入っておられず、マルタが迎えに来た場所におられた。
31 さて、マリヤと共に家にいて、彼女を慰めていたユダヤ人たちは、マリヤが急に立ち上がり、家を出たのを見て、「墓の所で泣くために、墓に向かった。」と言いながら、彼女について行った。
32 それから、マリヤはイエスがおられる所に行き、イエスを見ると、イエスの足元に平伏して、彼に言った。「主よ、あなたがここにおられたら、私の兄弟は死ななかったでしょう。」
33 それで、イエスは泣き悲しんでいるマリヤと、共に泣き悲しんでいるユダヤ人たちを見ると、霊の中でうなり、心を乱された。
34 そして言われた。「彼をどこにねかしましたか。」彼らはイエスに言った。「主よ、来てご覧ください。」
35 イエスは涙を流された。
36 それから、ユダヤ人たちは言った。「イエスはラザロをどんなに愛していたかをご覧なさい。」
37 そして、ユダヤ人の中には、「盲目の人の目を開けたこの方が、この男が死なないように、何かできなかったのでしょうか。」と言う者たちがいた。
38 それから、イエスはまた、ご自分の中でうなりながら墓に行かれた。墓は洞窟であり、石がそれに立てかけてあった。
39 イエスは言われた。「石を取りなさい。」故人の姉妹マルタは彼に言った。「主よ、四日目ですから、もうすでに臭くなっております。」
40 イエスは彼女に言われた。「信じれば、あなたは神の栄光を見るとわたしはあなたに言わなかったのですか。」
41 その時、彼らは故人が横になっている所から石を取り除いた。そしてイエスは目を上げて言われた。「父よ、わたしを聞き入れてくださったことを、あなたに感謝します。
42 それで、あなたがいつもわたしを聞き入れてくださることをわたしは知っていました。しかし、わたしのまわりに立っている人々のために、あなたがわたしを遣わされたことを彼らが信じるために、わたしは言ったのです。」
43 イエスはこれらのことを言われてから、大声で叫ばれた。「ラザロよ、出て来なさい。」
44 そして、死んでいた者は、死人の服装で手も足も縛られ、顔は布で巻かれたままで出て来た。イエスは彼らに言われた。「彼をほどいてやり、帰らせてやりなさい。」
45 それから、マリヤの所に来て、イエスのなさったことを見た大勢のユダヤ人はイエスを信じた。
46 しかし、彼らの中のある人たちは、パリサイ派の人たちの所に去って行って、イエスがなさったことを彼らに告げた。
47 それで、大祭司たちとパリサイ派の人たちは、議会を召集し、言った。「我々は何かやっていますか。というのは、この男はたくさんの奇蹟を行なっているのです。
48 もしこの男をこのままほっておけば、すべての者は彼を信じます。そして我々の場も国家も、ローマ人たちは来て取り上げてしまいます。」
49 しかし、パリサイ派の一人で、その年の大祭司であったカヤパという人が彼らに言った。「あなたがたはまったく何も理解していないし、
50 さらに、あなたがたは、国全体が滅びないで、一人の人が国民のために死ぬことは、私たちにとって益となるとも考えていません。」
51 しかし、彼はこれを自ら言ったのではなく、彼はその年の大祭司であったので、イエスはこの国家のために死のうとしている、と彼は預言したのである。
52 そして、この国家のためだけではなく、広く散らされた神の子どもを一つに集めるためなのである。
53 それで、彼らはその日から、イエスを死刑にしようと、全員で協議し始めた。
54 それで、イエスはもはやユダヤ人の中を公然とは歩かず、その所を立ち去り、荒野の近くにあった田舎のエフライムという町に行かれた。そして、ご自分の弟子たちと共にそこで過ごされた。
55 そして、ユダヤ人の過越祭が近く、大勢の人たちは、自らを清めるために、過越祭の前に、地方からエルサレムに上って行った。
56 ゆえに、人々はイエスを探し、そして神殿の敷地に立って互いに、「皆さん、どう思いますか。まさかあの方が祭に来るとは思っていないでしょうね。」と話し合っていた。
57 さて、もしイエスのいる所を知っている人がいれば、イエスを逮捕するから知らせよ、と大祭司たちとパリサイ派の人たちは、命令を出してあった。