ヨハネ 10
1 さて、イエスは道を過ぎ行く時、生まれつきの盲人の男に目を留められた。
2 そこで、イエスの弟子たちは、イエスに尋ねて言った。「ラビ①よ、生まれつき盲目ということは、誰が罪を犯したのでしょうか、この男でしょうか、それともこの男の両親でしょうか。」
3 イエスは答えられた。「この人も、両親も罪を犯さなかったのです。しかし、これは神の御業が、彼に表わされるためです。
4 わたしは、わたしを遣わした方の御業を、昼の間に行なわなければなりません。誰も働くことのできない夜が来ます。
5 わたしは世にいる間は、世の光です。」
6 イエスはこれらのことを言われてから、地面につばを吐き、つばきで泥を作り、盲人の両目にその泥を塗られた。
7 そして、イエスは彼に言われた。「シロアムの池に行って、洗いなさい。」(シロアムとは、訳すると、「遣わされた」である。)ゆえに、彼は行って、洗い、目が見えるようになり、帰って来た。
8 そこで、近所の人たちと、以前その人が盲目であったのを見た人たちは言った。「これは、座って物乞いをしていた人ではありませんか。」
10 それで、近所の人たちは彼に言った。「あなたの目は、どういうふうに開かれましたか。」
11 彼は答えて言った。「イエスという人が、泥を作って、ぼくの目に塗り、『シロアムの池に行って、洗いなさい』とぼくに言いました。それで、ぼくが行って洗ったら、見えるようになったのです。」
12 それから、彼らはその人に言った。「その人はどこにいますか。」彼は言った。「知りません。」
13 彼らは、以前盲目であった人を、パリサイ派の人たちの所へ連れて行った。
14 ところで、イエスが泥を作り、その人の目を開けられた日は、安息日であった。
15 それで、パリサイ派の人たちも、もう一度その人にどういうふうに目が見えるようになったか、と尋ねた。その人は彼らに言った。「イエスはぼくの目に泥を塗りました。そしてぼくは洗いました。そして、見えているのです。」
16 すると、パリサイ派の中には、「安息日を守らないから、この者は神から来たのではありません。」と言う者たちもいたし、また「罪人である者が、どうしてこんな奇蹟ができるでしょうか。」と言う者たちもいた。そして、パリサイ派の人たちの間に、分裂が起こった。
17 彼らはまた盲人に言った。「お前は、あの人があなたの目を開けてくれたことに関して、あの人について何を言うか。」彼は言った。「あの方は預言者です。」
18 それで、ユダヤ人たちは、視力を回復した男の両親を呼ぶまで、盲目であったことと、見えるようになったことをこの人に関して信じなかった。
19 そこで、ユダヤ人たちは両親に尋ねて言った。「あなたがたが生まれつきの盲目であると言っているこの人は、あなたがたの息子ですか。では、彼はどうやって今見ているのですか。」
20 その人の両親は彼らに答えて言った。「これは私たちの息子で、生まれつきの盲目だったと知っています。
21 しかし、息子がどうやって今見えるのか、分かりません。また、誰が彼の目を開けたのかも、私たちは分かりません。息子は成人ですから、本人に尋ねてください。自分で自分のことは話します。」
22 彼の両親は、ユダヤ人たちを恐れていたから、このように言ったのである。なぜなら、ユダヤ人たちはもう既に、誰であれ、イエスはキリストであると言い表すならば、その者をシナゴーグから破門すると決定していたのである。
23 であるから、彼の両親は、「息子は成人ですから、本人に尋ねてください。」と言ったのである。
24 ゆえに、ユダヤ人たちは再び、盲目であった男を呼び、彼に言った。「神に栄光を帰しなさい。この男は罪人であることを、私たちは知っています。」
25 したがって、彼は答えて言った。「あの方が罪人かどうか、ぼくは知りません。一つだけ知っています。ぼくは盲目だったが、今は見えます。」
26 そこで、ユダヤ人たちはまた彼に言った。「あの者はお前に何をしたのか。あの者はどうやってお前の目を開けたのか。」
27 彼はユダヤ人たちに答えた。「ぼくはもう既にあなたがたに話したが、聞き入れませんでした。何でもう一度聞きたいのですか。あなたがたもあの方の弟子になりたいのではないでしょうね。」
28 ゆえに、ユダヤ人たちは彼をののしって言った。「お前はあの者の弟子だが、私たちはモーセの弟子だ。
29 我々は、神がモーセにお話しになったと知っているが、この者がどこの者か知らない。」
30 その男は彼らに答えて言った。「どうやら、これにはすごいことがあります。あの方はぼくの目を開けてくださったのに、あの方がどこの方か、あなたがたは知らないということです。
31 しかし、ぼくたちは神が罪人たちに耳を傾けてくださらないことを知っています。しかし、もし誰でも神を礼拝する者であり、神のご意志を行なえば、神はその人に耳を傾けてくださいます。
32 この世が始まって以来、人が生まれつきの盲人の目を開けたなどということは、耳にしたことがありません。
33 もしこの方が神からでなかったのなら、何事も行なえなかったでしょう。」
34 ユダヤ人たちは彼に答えて言った。「お前はまったく罪そのものから生まれたのに、私たちを教えるのか。」そして、彼を追放した。
35 イエスは、ユダヤ人たちは彼を追放したことを聞かれた。そして、イエスは彼を探し出し、彼に言われた。「あなたは神の子を信じますか。」
36 彼は答えて言った。「その方はどなたですか。主よ、ぼくはその方を信じることができますように。」
37 そして、イエスは彼に言われた。「あなたはもう彼が見えました。そしてあなたと話しているのが、その人です。」
38 それで、彼は言い出した。「主よ、私は信じます。」そして、彼はイエスを礼拝した。
39 それからイエスは言われた。「わたしは裁きのためにこの世に来ました。それは、見えない者は見、見える者が盲人になるためです。」
40 そして、イエスと共にいたパリサイ派の何人かは、この言葉を聞き、イエスに言った。「私たちも、盲目ではないでしょうね。」
41 イエスは彼らに言われた。「もしあなたがたが盲目であったなら、あなたがたには罪がなかったでしょう。しかし、今あなたがたは自分が見えると言っています。したがって、あなたがたの罪は残るのです。」